磁場測定器の作成


  1. ホール効果による強磁場測定の実験:  ネオジム磁石取扱注意


  (1)  銅箔によるホール効果の測定:

  導体・半導体の 直方体に切り出した試料の、厚み方向に磁場 B (磁束密度)をかけ、鉛直方向に 電流 I を流すと、その幅方向に電位差 VH を生じる。 この現象をホール効果と呼び、電荷のキャリア密度(=電子、空孔の密度)が低いほど その効果(=ホール係数 R)が大きくなる傾向にある。

  まず、強い磁場で 比較的その強度分布が安定している、ネオジム磁石(95×45×6mm、若松通商・13年前)を 4枚ずつ重ね(軍手をして、間にアクリル板を挟んで注意深く行う)、互いに向い合せ(間隔10mm)、固定した物を作り、その中にセンサを入れて測定する。 センサは、プリント基板をエッチングして作成した 銅箔(片面基板のCu厚み a = 35μm)を用いた。 幅 b = 10mm、トータル長さ 100mm、幅方向の電極の一方は 2つに分けて、電流を通した時の電圧不均衡を補正する。
  銅のホール係数は文献値により RCu =5.5×10-11(m3/C)なので、 V(V) = bE = b・vB = (1/(q・n))・BI/a) = R・BI/a (n:キャリア密度、/m3)より、 電流を 5(A)流し、B = 数千ガウス としても、数μV程度にしかならないので、低オフセット・オペアンプを使って1000倍に電圧増幅して、デジタルテスター(最小0.1mV)で測定することにした。 ±9V電源はレギュレーター2段で落として安定化した。
  I=5(A)の電流は、41.1 の可変電源を用い、400W1Ω(メタルクラッド100W0.25Ω×4)の抵抗を通して供給した。

  
 

  測定は、@ テスト電圧源の約3.1μVを計り(31μV、310μVは高めに出るので使わない)、倍率VR(200kΩVR)を合わせる。
   A 入力を短絡し、オフセット調整する(500ΩVR)。
   B Cuセンサにつなぎ(磁場をかけないで)電流を流して、バランス調整をする(10ΩVR)。(バランス調整の 33+10は、出来合いの追加抵抗)
   C 後は、(電圧が微弱で狂いやすいので、)測る毎に バランス調整とオフセット調整をする。 ドリフトがかなりある。

  測定結果は、I = 5.0(A)流して、縦方向 h = センター±3cmで 4.5〜4.6(μV)、 平均 4.6μV) だった。 ∴ 計算により、磁束密度 B = A・V/(RCu・I) = 35×10-6(m) × 4.6×10-6(V) /(5.5×10-11(m3/C) × 5.0(A)) = 0.59 テスラ) = 5900ガウス) 程度となった。

    * 10(T)までは、均一磁場ならばプロトンの核磁気共鳴周波数で、それ以上の超強磁場測定は、唯一 「ファラデー効果」により測られる。 因みに中国製のネオジム磁石は概して着磁が弱い。




  (2)  ゲルマニウム片による測定:

  手持ちのゲルマニウム・インゴット(99.999%)から、ダイヤモンド糸鋸で切り出し、サンドペーパーで研磨して、19×8×2 mm程度の試料(厚み a =2mm)を作成する。 ステンレスハンダ用のフラックスを少量付け、ヤニなしハンダで点状に予備ハンダして、(フラックスを落とすために)水洗する。
  これを両面基板を加工したものにハンダ付けし、配線してから、(ゲルマニウムはもろいので、磁石が強い力で当たっても壊れないように、)アクリル板保護カバーを付ける。

  このセンサは、出力がmV台と 大きいので、アンプなしにそのままデジタルテスターで測定する。
   @ 3V電池と電流計をつなげ電流を流し(4.2mA)、磁場なしでセンター値のずれを確認する。(磁場なしで 13.5mV)
   A (1)のネオジム4枚重ねの磁極に入れ、同様に ホール電圧を測定する。(27.1mV)  測定結果は、 V = 27.1 − 13.5 = 13.6 (mV
   B (1)の磁極の磁束密度は 0.59) なので、 このゲルマニウム片のホール係数 RGe(m3/C) と キャリア密度 n(/m3) を求めると、

     RGe = aV/(BI) = 2×10-3(m) × 13.6×10-3(V) / (0.59(T) × 4.2×10-3(A)) = 1.1 ×10-2 (m3/C)
                                     → 補正値(×0.7) 7.7×10-3 (m3/C)
     nGe = 1/qRGe  = 1/(1.6×10-19(C) × 7.7×10-3(m3/C)) = 8.1×1020(/m3
   ∴ キャリア密度が小さいほど ホール係数が大きくなる傾向にある。

   * 新潟県教育センターの実験(1988年)では、さらに、アンチモン(5価)とインジウム(3価)を原子数比で0.001at%ドープして、ホール係数を測定している。 磁場発生には電磁石を用い、この結果では、、アルミは 約0.8(T)以上までゲルマニウムでは 約0.3(T)まで、B vs VHの直線性があり、それ以上では飽和して徐々に曲がっていく。 純ゲルマニウムは0.3(T)を超えるあたりから曲がり始め、ゲルマニウムはこの曲線より推定して補正する。(* 0.6(T)で、70%くらい) インジウムをドープしたゲルマニウムはさらに低く 0.2(T)から曲がる。

 

  このゲルマセンサと (1)の銅センサを使って、一枚のネオジム磁石(95×45×6mm)の表面磁場分布を調べると、薄くて平べったいのでかなりムラが出て、端が強く中央部が弱い。(重ねると均一に近づく。)
  磁石の表面・中央部の測定値は、 ゲルマセンサ(補正値)で 0.16(T)。





  2. ホール素子による磁気メータ(ガウスメータ)の作成:


  中〜強磁場の磁場計測装置は、簡単に手に入る素子で 2000ガウス(0.2テスラ)まで直線的ホール電圧 VH を出力するものとして、昔からあるTHS119 が最も手頃となる。(弱磁場測定用の素子は近年多く出されている。)

  VH−Ic、 V−B2000G以下の全範囲で直線なので、端子の1、3に約5mAのバイアス電流を流し 1000(G)(0.1(T))の磁場をかけると、2、4に約80mVを出力するので、電圧増幅率 G=1000mV/80mV = 12.5倍に電圧増幅すると、mVの読みが そのまま ガウス単位になる。 実際は24倍程度にして、PIC内で数値を調整する。
  アンプは、4V以上に振るため、フルスィング・オペアンプの NJM2734D (オペアンプ4個入り)を用いた。 (計装アンプは、入力が大きすぎて アンプの方で飽和するので、使えない。)
  ホール素子の出力は、プラス側とマイナス側に分けてそれぞれ差動アンプで増幅し、PICのアナログピン(AN8、AN9)にそれぞれ入れてAD変換し、±の表示ができるようにした。

  

 

  増幅率の調整は、ヘルムホルツ・コイルは弱すぎ、また基準磁界は高価であるため、THS119の規格表の VH−Ic、 V−B の直線性を利用してプロットして行なった。

  調整法は、@ ホール素子に、5mAのバイアス電流をかける。 (図の500ΩのVRはブロードなので、300Ωの抵抗に固定しても良い。)

  A 次に、磁場無しで、アンプ出口のAN8、AN9の電圧を測り、両方が同じような値になるように零調VRを回して調整する。(AN8、AN9共、74mV位) それから、素子の2−4間のホール電圧 VH を測っておく。(儼H=3.5mV位) これは測定系全体のヒステリシス分となる。(0にはならない → プログラムで0にする)

  B 1枚か2枚のネオジム磁石を使って複数の適当な磁界をかけ、2−4間VH を測り(測定値 ± 儼H(3.5mV))、同じ磁場で AN8、または AN9 のアナログ出力を測り、規格表のグラフから読み取った値にVRを調整して、グラフにプロットする。 2回目以降はそのまま測ってプロットする。 結果は、2000(G)以下この測定系は十分 直線的に増幅する事を確認した。 (1.(1)の4枚ネオジム磁石×2は強すぎて、ギャップの入り口で5.05V(=電源電圧)に飽和して 測定不可だった。)



 


         PICプログラム(PIC18F14k50):       lib_adc:




    § 昨今の半導体製造業の状況:


  半導体は”近代の石油”とも呼ばれ、家電、自動車、インターネット通信など、現代社会で用いられるほぼすべての製品に使用され、必要欠くべからざるものとなっています。 ブルドーザーにも約100万円分のコンピューターが入っています。 その半導体を製造する有名企業として、最先端の半導体を製造する台湾のTSMC、人工知能用半導体メーカーの エヌビディア、世界の半導体売上No.1の 米国のインテルなどが挙げられます。

  その中で、日本はこの分野にあっても相変わらず「技術立国」です。 世界の半導体製造メーカーを支える企業が 日本にいくつも存在するのです。 すぐ思い浮かぶのは、逆浸透膜・限外ろ過膜や 超高純度の水とフッ酸ですが、最近特に次の3つの企業が注目されます。 すなわち、食品メーカーの味の素の ビルドアップフィルムは、高性能な半導体・パソコン向け半導体の95%以上のシェア、 フジミ・インコーポレイテッドは 超精密研磨剤で世界シェアの90%を占め、 三井金属は スマホ用のパッケージ材の極薄銅箔で シェア100%、などとなっていて、日本の技術力無しでは 世界的なメーカーであっても高性能な半導体・半導体製品を製造することはできない状況になっています。

  しかし一方で、こうした資産を狙う中国の動きがあります。 中国の日本企業の買収が盛んにおこなわれており、富士通PCは LENOVOに買収され、 三洋アクアは Haierlに買収され、レナウン、本間ゴルフ、東芝、シャープ、NECなども同じ道をたどっています。 また数年前には日本の半導体工場が、(おそらく中国スパイのロビー活動によって)火災になりました。 政治家による売国奴的な政策によるものですが、そろそろ日本国民も十分に警戒して、目覚めていくべき時ではないかと思います。





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